Mar 3, 2012
歌(作品)というものは、物事の暗い部分を受け入れなければいけない。Tom Rapp
人生は元気にあふれ、明るく、誰もが幸せになるように順応しなければならないなどというようなデタラメ(嘘)を言わないことが大切なのだと。
だから私は、もしそれらの不幸な人たちのような立場に立っていなければ、そのような力をもたらす曲を書くことができるとは思えない。自分の人生を救うためにそういった曲を書くのだ。
私が思うにきっと秘訣となる鍵というのは、絶望の淵にいて、それをまっすぐ見極め、優れた作品を創り続けるために人生を送ることにある。
向こう岸に希望があったら、それは嘘に基づいたものであってはならなかった。
May 22, 2011
ーこの地方の日の出は、日々新たに私を圧倒する出来事であった。劇的だったのは、地平線上に太陽が急に昇ってきたときの光輝よりも、それに続いてひき起こることの方にあった。私は夜明け直前に、キャンプ用の椅子を持ち出して、かさアカシアの下に座る習慣をつけた。私の前には小峡谷の底に、黒い、ほとんど暗緑色のジャングルが細長く横たわり、谷の反対側にはジャングルの上に聳える大地の外輪があった。まず、光と闇の対照がくっきりと鋭くなった。それから所持物がはっきりとした形をとって光のなかに現われ、光は緊密な輝きとなって峡谷を満たした。谷の上方にみえる地平線はまばゆいばかりに白んだ。次第に輝きを増してくる光は諸物の構造にまで透過するように見え、諸々の事物は、まるで色ガラスの破片のように、ついには透明に輝きだすほどにまで、内側から輝いてくるようになった。すべてのものは閃耀する水晶に変容してしまう。べル・バードの泣き声が地平線のあたりに響き渡った。このような瞬間には、私はまるで寺院の内部にいるような気がした。それは一日のうちの、もっとも聖なる時間であった。私は歓喜して飽くことなくこの光輝を眺めており、むしろ時を超越した恍惚にひたっていた。ユング自伝 - 旅
Jul 6, 2010
黒の幻想
黒は明るい輝かしい色である。少なくとも私にとっては―。
陰鬱で濁った感じは、私の中では絶対に黒とは結びつかない。それどころか、朗らかで透明な宝石のような光の世界が、黒という言葉から私のなかに生れる。
それは時には、優雅で温かい女性的な肌触りを連想させることもある。
また時には、冷たくて爽やかで、合理的な盤のような映像を喚び起こすこともある。
幾何学的な構造の石の建物の、廊下には四角な黒い板が敷き詰められるだろう。
純白な大理石の壁には、円形の黒い板がはめこまれるのがふさわしい。
巨大な哲学の体型は黒い塔を想わせるし、完璧な短い詩篇は小さな黒い箱である。
黒い夜空ほどなまめかしいものはなく、黒い髪の毛ほど神秘なものはない。
黒白映画は着色映画よりも遥かに幻想的であり、墨絵は極彩色の絵よりも深い空間を表現する。
黒は最も形而上学的な色である。それに比べれば金の豪華さも輝きを失う。白の無邪気さも幼く見える。
黒衣を纏う時、女は最も美しく、男性は最も雄々しい。黒はそれを身につける全てのものの本質だけを表出させるようにする。
眼を閉じて聴く時、人の声が最も感情を繊細に表現するように感じられるのは、その声が黒の背景のまえを流れるからだろう。闇のなかを響く音楽が人を深く感動させるのは、黒が日常的な時間を永遠の中に解消させているからだろう。
人間の一生が美しく思われるのは、生れる前と死んだ後との二つの絶対の中間に、人生が意識される時である。つまり、無限に拡がる黒の平面のうえに、私たちの生命が小さな赤い血として見えてくる時である。
黒は明るい輝かしい色である。少なくとも私にとっては―。
ー 中村真一郎「氷花の詩」
Jun 14, 2010
“人生のある一瞬には 地平線も水平線も見えない 夢だってあるのだ” ー 田村隆一
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